
SLAM技術の基礎知識|構成要素からアプローチ方法まで
ロボットが人のように環境を認識し、自ら判断して動作するためには「自分がどこにいて、周囲に何があるのか」を正確に把握することが欠かせません。その鍵を握るのが、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術です。
SLAMとは、センサーで取得した情報をもとに自己位置を推定しながら、同時に地図を作成する仕組みを指します。ロボットにとって、環境を理解して行動を判断するための「目と頭脳」の役割を果たす技術といえるでしょう。
この技術は、倉庫内を走行する搬送ロボットや家庭用ロボット掃除機をはじめ、ドローン、さらにはAR/VR機器など、多岐にわたる分野で活用が進んでいます。
本記事では、SLAMの基本構成から主要なアルゴリズム、そして実際の応用事例までを、わかりやすく解説します。
SLAMとは
SLAMは、ロボットが未知の環境の中で自らの位置を推定しながら、同時に地図を生成する技術です。たとえば、人が初めて訪れた建物の中で、壁や柱の位置を見て頭の中に間取りを思い描きながら歩くようなイメージに近いでしょう。
ロボットも同様に、センサーを用いて周囲の環境を観測し、その情報をもとに自分の位置を計算しながら地図を作成します。この技術により、ロボットは事前にマップを用意しなくても、未知の環境を自律的に移動できるようになります。
たとえば、倉庫を走行する搬送ロボットは、棚の位置が変わっても即座に環境を再認識し、最適な経路を選択して移動できます。このような環境変化への柔軟な適応力こそ、SLAMの最大の強みです。
さらに、SLAMは自律搬送ロボットをはじめ、AR/VR、ドローン、掃除ロボット、自動運転車など、私たちの生活や産業を支える多くの機器に活用されています。かつて人が操作していた作業を、機械が自ら判断して遂行できるようにすることがSLAM技術の本質です。

SLAMの基本要素
SLAMは「自己位置推定」と「地図構築」という2つの要素で構成されています。どちらか一方でも誤差が生じると、もう一方にも影響します。
このように、両者を正確に連携させることが、ロボットの安定した動作には欠かせません。
Localization(自己位置推定)
自己位置推定とは、ロボットがセンサーから得た情報をもとに「自分がどこにいるのか」を判断する工程です。たとえば、人が暗闇の中で壁づたいに歩くとき、手の感触や足音の反響を頼りに位置を推測するようなものです。
ロボットも同様に、LiDAR(ライダー)やカメラなどのセンサーから得たデータを解析し、過去の観測結果と照らし合わせながら現在位置を算出します。
ただし、環境が広く複雑になるほど誤差は蓄積しやすく、わずか数センチのずれが長距離では大きな誤差となって現れます。そのため、高精度なセンサーの選定とアルゴリズムの最適化が欠かせません。
たとえば、倉庫や工場で稼働する搬送ロボットが棚や壁を正確に避けながらスムーズに走行できるのは、この精密な自己位置推定処理があってこそです。安定した自己位置推定は、SLAM全体の精度と信頼性を支える中核技術といえるでしょう。
Mapping(地図構築)
地図構築とは、センサーで取得した観測データをもとに環境をモデル化し、ロボットが移動可能な範囲を理解するプロセスです。カメラやLiDAR(ライダー)で検出した特徴点を解析し、壁や障害物の位置関係を地図として再現します。
これは、人が部屋を見回して「ここに棚があり、あちらに出口がある」と空間を把握する行為に近いといえるでしょう。
さらに、ロボットは移動のたびに新しい情報を取得し、地図を継続的に更新します。そのため、配置の変化や新たな障害物の出現にも即座に対応し、最適な経路を再計算することが可能です。
自己位置推定と地図構築は互いに密接に連携しており、どちらか一方の精度が欠けると、SLAM全体の信頼性が損なわれます。したがって、両者をバランスよく最適化することが、安定した自律走行を実現するうえで重要な鍵となります。
SLAMに利用されるセンサー
SLAMでは、環境を正確に認識するために複数のセンサーが使われます。それぞれに得意分野と弱点があり、環境条件や用途によって最適な組み合わせが異なります。
ここでは、代表的な3種類のセンサーと、それらを組み合わせる「センサー融合」について解説します。
LiDAR(ライダー)
LiDAR(ライダー)は、レーザー光を用いて対象物までの距離を計測するセンサーです。反射光が戻ってくるまでの時間をもとに距離を算出する仕組みで、高精度モデルでは数センチ単位、一般的な2D LiDARでも数センチから数十センチ程度の精度で空間を把握できます。 この原理は、コウモリが超音波を使って周囲の位置関係を把握する「反響定位」に似ています。LiDARも同様に、反射の情報をもとに環境を立体的に認識します。
LiDARの最大の特徴は、壁や障害物の位置を三次元的に高精度で検出できる点にあります。 そのため、屋外や広い倉庫などの大規模な環境でも高い信頼性を発揮し、光の影響を受けにくいため暗所でも安定した計測が可能です。
一方で、装置が高価でサイズも大きいため、小型ロボットではコストや設置スペースが課題となる場合があります。
それでも、LiDARは正確な地図構築と自己位置推定を支える中核的な技術として、現在も多くのロボットシステムで不可欠な役割を担っています。
カメラ(Visual SLAM, V-SLAM)
カメラを利用するVisual SLAM(ビジュアルSLAM)は、周囲の映像情報をもとにロボットの位置と環境地図を同時に推定する手法です。
使用されるカメラには、単眼カメラ・ステレオカメラ・RGB-Dカメラなどがあり、それぞれで深度(距離)情報の取得方法が異なります。LiDARに比べて安価かつ軽量である点が、大きな利点といえるでしょう。
一方で、カメラは光の影響を強く受けやすく、暗所や強い逆光下では計測精度が低下します。また、物体の色や質感によっては特徴点を十分に検出できない場合もあります。 このため、屋内のように照明条件が一定している環境では高い性能を発揮しますが、屋外ではLiDARなど他のセンサーと併用されるケースが一般的です。
Visual SLAMは、コストと汎用性のバランスに優れた技術として、家庭用ロボットやAR/VR機器など、私たちの身近な製品にも広く採用されています。
IMU(慣性センサ)
IMU(Inertial Measurement Unit)は、加速度と角速度を計測するためのセンサーです。 内部にはジャイロスコープと加速度計が組み込まれており、ロボットの傾きや姿勢の変化を高精度に検出します。たとえば、自転車に乗っているときに体の傾きを直感的に感じ取る感覚に近いといえるでしょう。
IMUは短時間の動作変化を非常に精密に捉えられる一方で、長時間の使用ではわずかな誤差が蓄積し、位置のずれが生じるという課題があります。 この現象は「ドリフト」と呼ばれ、放置すると自己位置推定の精度を低下させます。 そのため、IMU単体ではなく、他のセンサーと連携して誤差を補正することが重要です。
特にIMUは、急な加速や一時的なセンサー遮断が発生しても動作を継続できるという強みを持ちます。この特性により、ロボットの姿勢制御を補助する安定化装置として欠かせない存在となっています。言い換えれば、IMUは「動きを滑らかに保つ支え」としてロボットの信頼性を下支えしているのです。
Preferred Roboticsでは、複数のセンサー情報を統合するセンサー融合の仕組みを採用しています。2D LiDAR、カメラ、IMU、ホイールオドメトリといった異なる特性を持つセンサーを組み合わせることで、計測精度と走行安定性の両立を実現しています。
各センサーの観測値を相互に比較し、異常が検知された場合には自動的に補正や切り替えを行うアルゴリズムを搭載。また、環境の変化や一時的なノイズの影響を抑制し、自己位置推定を継続できるように設計されています。
このような統合的な制御により、ロボットは複雑な環境下でも正確な位置把握を維持し、長時間の安定した自律走行を可能にしています。
SLAMのアルゴリズム
SLAMは、環境を観測し、位置を推定し、地図を更新する一連のアルゴリズムによって動作します。ロボットが「見て・考えて・修正する」このプロセスを繰り返すことで、自己位置の精度を維持します。

ここでは、その主要な処理ステップを順に解説します。
1.特徴点抽出・環境認識
特徴点抽出とは、カメラ画像やLiDAR点群の中から、形状・模様・輝度の変化など特徴的な部分を検出する工程です。
ロボットはこれらの特徴点を“目印”として記録し、周囲の環境を認識します。たとえば、人が「壁の角」や「看板の文字」を頼りに自分の位置を覚える感覚に近いといえるでしょう。
この工程では、環境中の動かない要素(壁・柱・機械など)を優先的に選ぶことが重要です。動く人や荷物などを誤って特徴点として扱うと、地図が不安定になり、位置推定にも誤差が生じてしまいます。
安定した特徴点を検出できれば、後続の自己位置推定や地図構築の精度が大幅に向上します。そのため、環境の特性や使用するセンサーに応じて、最適な特徴点抽出アルゴリズムを選択することが求められます。
2.対応付け(Data Association)
対応付けとは、過去に観測した特徴点と現在の観測結果を照合し、それらが「同じ場所かどうか」を判断する工程です。この処理によって、ロボットは自分の移動量や向きの変化を正確に把握できます。たとえば、旅先で「この建物、前にも見た」と気づくような感覚に近いでしょう。
対応付けが正確であれば、地図と自己位置の整合性が保たれ、安定した環境認識が可能になります。一方で、誤って異なる特徴点を対応させてしまうと、地図全体に歪みが生じ、位置推定の精度も低下してしまいます。 そのため、環境変化やセンサーの誤差に強い照合アルゴリズムを設計することが不可欠です。最終的に、対応付けの精度こそがSLAM全体の安定性を左右する重要な要素といえるでしょう。
3.自己位置推定(Pose Estimation)
自己位置推定とは、センサーから得られる情報をもとにロボットの位置と姿勢を算出する工程です。この処理には、カルマンフィルタや粒子フィルタといった確率的手法が用いられます。これらのアルゴリズムは、ノイズを含む観測値を統計的に処理し、最も信頼性の高い位置を推定する仕組みです。
さらに近年では、観測データをグラフ構造として表現し、全体の整合性を最適化するGraph SLAMのような手法も広く利用されています。このアプローチにより、大規模な環境でも計算を効率化しつつ、高精度な推定を維持することが可能です。
自己位置推定の精度が高まれば、それに伴って地図の信頼性も向上します。したがって、この工程はSLAM全体の中核を担う最も重要な要素であるといえるでしょう。
4.地図更新(Mapping)
地図更新とは、自己位置推定で得られた位置情報をもとに、新たな観測データを地図へ反映する工程です。
ロボットは移動するたびに環境情報を追加し、まるで地図を“成長させていく”ように周囲を記録していきます。たとえば、探索型ゲームでプレイヤーが進むごとにマップが少しずつ明らかになっていくイメージに近いでしょう。
この工程では、過去の地図と最新の観測データを重ね合わせ、位置のズレを最小限に補正します。さらに、作業エリアに新しい障害物が出現した場合には、その情報を即座に反映し、安全な経路を再計算します。
更新処理が高精度であれば、ロボットは刻々と変化する環境下でも安定した走行を維持することが可能です。つまり、常に最新の情報を保ち続けることこそが、SLAM全体の信頼性を支える要となるのです。
ループクローズ(Loop Closure)
ループクローズ(Loop Closing)とは、ロボットが過去に通過した場所へ再び到達した際に、位置誤差を修正する工程です。
長時間の走行では、センサー誤差などの影響によって微小なずれが蓄積し、地図全体が歪んでしまうことがあります。ループクローズはその歪みを検出・補正し、地図全体の整合性を回復させる重要な処理です。
この工程を適切に行うことで、長時間の運用でも地図の信頼性と位置精度を維持することができます。
Preferred Roboticsでは、ループクローズをSLAMの中核を支える重要プロセスとして位置づけています。
オンライン処理時には、走行中の誤差を抑えるために軽量な補正を定期的に実施し、リアルタイムで地図の安定性を保ちます。一方、オフライン処理では、記録されたデータをもとに全体最適化を行い、地図全体の整合性を再調整します。
この二段階構造により、計算負荷を最小限に抑えながらも、高精度な地図を長時間にわたって維持することが可能です。結果として、走行距離が長くなっても自己位置の安定性が損なわれにくく、現場での確実な自律走行を支える仕組みとなっています。
SLAMの方式
SLAMにはさまざまな手法がありますが、環境規模や使用するセンサー、求められる精度によって最適な方式は異なります。
ここでは代表的な4つのアプローチを紹介します。それぞれの特徴を理解することで、運用目的に合ったSLAM方式を選択しやすくなるでしょう。
EKF-SLAM(拡張カルマンフィルタ)
EKF-SLAMは、拡張カルマンフィルタを用いてロボットの状態と地図を同時に推定する方式です。観測値と予測値を逐次更新しながら、ノイズを統計的に抑制し、全体の整合性を保ちます。数式構造が明確で、挙動の説明や理論的解析がしやすい点が特徴です。
一方で、状態数が増加すると計算量が急激に増大し、処理遅延が生じやすくなります。 そのため、大規模な環境や高速移動を伴う状況ではリアルタイム性の確保が課題となります。しかし、静的で小規模な環境では堅実に動作し、安定した性能を発揮する手堅い選択肢といえるでしょう。
また、EKF-SLAMでは誤差共分散の設定が結果に大きく影響します。センサー特性を正確に把握したうえで、パラメータを慎重にチューニングすることが重要です。実際の現場試験を通じて観測ノイズを測定し、更新式における重み付け(ゲイン)の最適化を行うことで、精度と安定性を高められます。
さらに、線形近似による誤差が蓄積すると推定が不安定になる場合があります。そのため、非線形性が強い環境では再線形化の頻度や閾値を適切に設定し、推定の安定性を維持することが求められます。
FastSLAM(粒子フィルタベース)
FastSLAMは、粒子フィルタを用いてロボットの軌跡と地図を同時に推定する方式です。多数の仮説(粒子)を並列に保持し、それぞれの粒子が自己位置と環境地図を個別に推定することで、未知環境における追従性と頑健性を両立します。
FastSLAMの大きな強みは、障害物が多い環境でも局所的な最適解を見つけやすい点にあります。一方で、粒子数を増やすほど計算負荷と電力消費が急増するため、システム性能や運用目的に応じた粒子数と再サンプリング頻度の最適化が不可欠です。また、重要度再サンプリングの偏り(サンプル貧困)を抑える工夫も求められます。
さらに、IMUやLiDARといったセンサーと組み合わせることで、短時間の加減速や一時的な視界遮蔽に対する耐性が向上します。これにより、屋内の狭い通路や障害物の多い現場でも軌跡の破綻を防ぎ、安定した自己位置推定が可能となります。
加えて、環境の複雑さやセンサー入力の信頼度に応じて粒子数を自動調整する設計を導入すれば、計算資源の無駄を抑えながら高い推定精度を維持できます。これにより、省電力化とリアルタイム性の両立が実現します。
Graph SLAM
Graph SLAMは、観測データと移動制約をグラフ構造として表現し、全体最適化によって誤差を最小化する方式です。ループクローズによる拘束条件を取り込むことで、地図全体の一貫性を高精度に維持します。
この手法の大きな特長は、大規模環境においても精度と安定性を両立しやすい点にあります。一方で、最適化問題の規模が拡大するにつれて、計算資源の確保が課題となります。 その対策として、疎行列を活用したソルバや、階層化による分割統治アプローチが有効です。さらに、動的物体を除去する前処理フィルタを導入することで、最適化の収束を安定化できます。
また、制約を逐次的に追加しながら解を更新するインクリメンタル型Graph SLAMを採用すれば、計算結果の再利用が可能となり、長時間運用でも更新遅延を抑えやすくなります。この設計は、リアルタイム性と精度を両立させる現実的な実装手法といえるでしょう。
さらに、センサー誤差の重み付けパラメータや外れ値抑制の閾値を適切に設定することで、 ノイズの多い環境下でも頑健な地図を生成できます。したがって、計算効率と推定精度のバランスを意識した設計こそが、Graph SLAMを最大限に活かす鍵となります。
Visual SLAM(ORB-SLAM, LSD-SLAMなど)
Visual SLAMは、カメラ画像から特徴を抽出し、ロボットの姿勢と地図を同時に推定する方式です。センサーが安価で軽量なため、小型ロボットやAR/VR機器をはじめとする幅広い分野で活用されています。
テクスチャが豊富な環境では多くの特徴点を取得でき、密度の高い情報によって空間表現力に優れる点が特徴です。一方で、照明変化やモーションブラー(動きによるブレ)に弱く、外光の影響を受けやすいという課題もあります。そのため、露光制御や特徴点監視を適切に行い、観測品質を維持することが重要です。
さらに、IMUやLiDARといった他のセンサーと組み合わせることで、暗所や一時的な遮蔽下でも安定した推定が可能になります。
また、キーフレーム選択や再局所化の条件を適切に設定することで、破綻からの復帰が迅速になり、長時間の稼働でも追跡の安定性を維持できます。
加えて、利用環境や計算資源に応じて解像度やフレームレートを調整することで、遅延を抑えながら高精度を維持できるため、エッジ端末上でのリアルタイム実行にも適しています。
Preferred Roboticsでは、ORB-SLAMやLOAMなどの既存研究を基盤とし、環境に応じた最適化を進めています。特に、屋内のように二次元移動が中心となる環境では、2D LiDAR方式を併用することで安定した自己位置推定を実現しています。
また、地図の骨格が崩れにくくなるよう、事前知識(構造モデル)を組み込む設計を採用しています。さらに、運用形態に応じて二段階の処理構成を導入しています。
オンライン処理では、軽量なループクローズを定期的に実行し、走行中の誤差を即時補正。オフライン処理では、高精度な最適化を行い、地図全体の整合性を回復します。この二段構成により、計算負荷を抑えつつ高精度と安定性を両立する運用が可能となっています。
SLAMの応用分野
SLAM技術は、さまざまな分野で活用が進んでいます。位置特定と地図作成を同時に行えることから、産業・家庭・エンターテインメントなど幅広い領域に応用されています。
ここでは代表的な事例を紹介します。

AMR(自律搬送ロボット)(位置特定と環境地図作成)
AMR(Autonomous Mobile Robot)は、工場や物流倉庫などで人と協調しながら物資を自律搬送するロボットです。SLAM技術を活用し、自身の位置と環境地図を同時に更新しながら、安全かつ効率的な走行を実現します。
たとえば、障害物を検知すると瞬時に経路を再計算し、衝突を回避することができます。 また、フリート管理システムと連携することで、複数台のロボットが互いに干渉せず、搬送順序や経路を自動的に最適化します。
AMRには、LiDAR、カメラ、IMU(慣性計測装置)など複数のセンサーが搭載されています。それぞれのセンサーが異なる特性を持つため、組み合わせによって環境認識の精度と信頼性を高めることができます。このセンサー融合により、照明条件の変化や床面の反射といった外的要因にも柔軟に対応し、安定した動作を維持します。
一方で、人や台車など動的要素の多い環境では、リアルタイムな地図更新と誤差補正の精度が特に重要です。AMRが安全に運行を続けるためには、こうした高速かつ安定した情報処理が欠かせません。
このように、AMRは安全性・効率性・省人化を同時に実現する次世代の搬送システムです。今後は、AI制御やクラウド連携の発展によって、より高度な自律判断や協調動作が可能になると期待されています。 将来的には、ロボット同士が情報を共有し、現場全体を最適化する知的物流システムへと進化していくでしょう。
ロボット掃除機(家庭内ナビゲーション)
ロボット掃除機は、SLAM技術を最も身近に体感できる家庭機器です。カメラやLiDARが室内の形状を捉え、家具や壁の位置を正確に把握します。
得られた情報をもとに最適な走行経路を計算し、効率的な清掃を実現します。たとえば、椅子の配置が変わっても地図を自動で再構築し、動線をすぐに調整することができます。
さらに、未清掃エリアを検出して清掃順を自動的に更新し、ムダな往復を防ぎます。 IMUやオドメトリと組み合わせることで、暗所や逆光といった条件下でも安定した自己位置推定が可能です。
一方で、反射床や鏡面などではセンサーの誤観測が生じる場合があり、補正処理やフィルタ設計が重要になります。
このように、ロボット掃除機は環境の変化に自律的に適応し、ユーザーの手間を減らしながら清掃品質を高めるよう設計されています。 予約運転やエリア指定機能を組み合わせれば、日常の清掃をほぼ完全に自動化することも可能です。
ドローン(屋内外の飛行制御)
ドローンは、SLAM技術を活用して屋内外を問わず高精度な飛行を実現します。GPS信号が届かない環境でも、カメラやLiDARを用いて自己位置を推定し、安定した姿勢を維持します。
障害物を検知すると、進行方向を瞬時に修正して安全な飛行経路へ切り替えることができます。たとえば、倉庫の棚間を飛行しながら在庫を点検する場合でも、SLAMにより狭い空間を正確に移動することが可能です。
さらに、建物の天井裏やトンネルなどの暗所点検にも活用が広がっています。このような環境では、IMU(慣性計測装置)が姿勢変化を補正し、飛行の安定化に貢献します。
SLAMを搭載したドローンは、測量・点検・監視など幅広い分野で活躍しており、従来のGPS依存型システムでは困難だった作業の自動化を実現しています。今後は、AIによる画像認識や経路計画との融合が進み、より自律的で信頼性の高い飛行制御が可能になると期待されています。
AR/VR(現実空間との位置合わせ)
AR(拡張現実)やVR(仮想現実)では、SLAM技術が現実空間と仮想空間を正確に結びつける基盤となっています。カメラ映像から特徴点を抽出し、IMU(慣性計測装置)の姿勢情報と組み合わせることで、利用者の動きを高精度に把握します。
これにより、視点の変化に応じて映像が即座に反応し、没入感の高い体験を提供できる仕組みです。たとえば、スマートフォンのARアプリでは、テーブル上に仮想オブジェクトを配置しても位置がずれることはほとんどありません。
VRでは頭部の動きを瞬時に反映し、仮想空間内の視点を滑らかに切り替えます。この処理では遅延が体験品質を大きく左右するため、SLAMの軽量化と安定性の確保が重要となります。
さらに、AIによる画像認識と融合することで、現実空間に存在する人物や物体の動きをより正確に捉えることができます。その結果、AR/VRはゲームや教育分野にとどまらず、医療訓練や遠隔作業支援など、産業用途へも拡大しています。
Preferred Roboticsの製品「カチャカ」は、屋内外での自律移動を想定して設計されたロボットです。特に店舗やオフィスなど、人とロボットが共存する物販・接客環境での活用を重視しています。
そのため、地図作成と自己位置推定の信頼性、そしてリアルタイムな応答性が欠かせません。当社では、2D LiDAR、カメラ、IMU(慣性計測装置)、ホイールオドメトリなど、複数のセンサーを統合しています。
これにより、光の反射や人の移動といった外乱の多い環境でも安定した走行が可能です。
また、Loop Closing(ループクローズ)を軽量化し、オンライン処理でこまめに誤差を補正する設計を採用しています。一方で、地図の保存やオフライン処理の段階では高精度な最適化を行い、全体の整合性を回復します。
この二段構成によって、計算負荷を抑えつつ高精度と安定性を両立させています。さらに、限られたリソース環境でも安定して動作するよう最適化されており、この設計思想が現場での高い信頼性を支えています。
小型で低価格でも、高度なSLAM技術を搭載したAMRなら「カチャカプロ」

「カチャカプロ」は、小型かつ低価格ながら、Preferred Robotics 独自の SLAM 技術により高精度な自己位置推定と地図構築を実現した自律搬送ロボットです。2D LiDAR・カメラ・IMU・オドメトリといった複数のセンサを融合し、環境に応じて最適なデータを選択・補正する仕組みによって、狭い動線や複雑なレイアウトでも安定した走行を可能にします。
さらに、オンラインでは軽量なループクローズを活用してリアルタイムに誤差を補正し、オフラインでは全体を最適化する二段階方式を採用。これにより、長時間・広範囲の稼働でも地図の信頼性を維持できます。
初期導入から運用サポートまで体制が整っており、スムーズな立ち上げが可能です。必要に応じて台数を追加しやすいため段階的な拡張にも適しており、省人化やスタッフの負担軽減、安全性の確保に貢献します。先進のSLAM技術によって、これからの現場環境をより柔軟かつ効率的に支える一台です。
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